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小石川の家/青木 玉 [書籍]

なんという美しい日本語なんだろう。
頁を繰るごとにあふれ出す、簡潔な文章で綴られた祖父と母との暮らし。
小石川の小さな家には明治の時代から地続きの空気が流れていて、そこで奮闘する小学生の玉さんの意地らしさ。
母は幸田文、祖父は云わずと知れた文豪幸田露伴。
かつて久世光彦さんがドラマ化したのを観た覚えがあります。
露伴を森繁久彌、文を田中裕子、玉を田畑智子が演じていて印象的なドラマでした。

「祖父は愚かしさを悲しむ、ひたすらな願いを立てたことを立派じゃないかと賞賛するが、こちらはどんなに恐くて痛くて苦しかろう、とてもじゃないがご免を蒙りたい。
そんな目に逢わなきゃ賢くなれないのなら、馬鹿で気楽がどんなによかろう。」
何を云っても叱られ、その度に山ほどの薀蓄を浴びせられる女の子がかような名調子で綴る本書は、露伴、文の人柄を愉しめると同時に、戦前にはあって現代にはない家の仕来たりや人間関係を垣間見られる名著なのであります。

駄文を書き散らしている僕が云うのもなんですが、美しい日本語を読む喜びは格別であります。
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